英雄なき島 硫黄島戦生き残り元海軍中尉の証言 久山忍 光人社NF文庫

英雄なき島―硫黄島戦生き残り元海軍中尉の証言 (光人社NF文庫)

英雄なき島―硫黄島戦生き残り元海軍中尉の証言 (光人社NF文庫)

海軍予備学生を経て、大日本帝国海軍士官に任官し、硫黄島の戦いに送られることとなった大曲覚元海軍中尉の証言をもとにまとめられた硫黄島での戦いの様相を描く内容。
大曲氏自身も仰っておられるが、一つの「事実」に対しては様々な立場から、見る人によってその数だけその人の「真実」が生まれうる。
硫黄島の戦い」という事実に対して、司令官であった栗林中将の立場、視点からまとめられた書籍等の作品と本書では受ける印象が大きくことなることが一番の衝撃であった。
本書以外にもWEB上で硫黄島の戦闘を経験した故人の体験記を読んだが、将官の視点と最前線の兵との視点では、同じ激戦、死闘であっても異なる印象を持つ描き方になるのだと思う。
いずれにせよ、硫黄島の戦いが始まる前からいかに過酷で、戦闘開始後はまさに死闘としか表現のしようがない悲惨な戦場だったことが伝わってくる。