機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY 皆川ゆか 講談社文庫

本書を読むのは旧版を含めれればもう6度目くらいになるのだろうか。
 プロローグの書き出しと、エンディングの結びが大好きなので、そらで言えてしまいそう。
 本書を初めて読んだのは今から約7年前の私がまだ16歳の高校生だった頃なのだが、
 本書を読んだことによって、私はガンダマーとして覚醒することとなったのである。
 これまで、ゲーム等を通してガンダムという作品の触りだけは知っていたものの、その魅力まではわかっていなかった。
 が、本書のプロローグは「逆襲のシャア」における「シャアの叛乱」(U.C.0093年)に始まり、
 1年戦争(U.C.0079年)における一大事件を描きつつ、そして「シャアの叛乱」で結ばれる。
 これは、主人公であるユウ・カジマを始めとしたガンダム作品のキャラクターたちが、単なる一作品、一時代のみの登場人物ではなく、
 「ガンダム」、正確に言うならば「宇宙世紀」という名の歴史ドラマの中の登場人物であることを物語っているのだ。
 そこに、私自身は熱くたぎる何かを感じ取り、以後そのままずるずると(外伝)ガンダマーを続けているといった次第である。
余談だが、講談社文庫によって再販された際に、旧版にて盛り込まれた様々な挿絵がオミットされてしまった代わりに、
 ミナカ・ユンカースという宇宙世紀の経済人類学者の講演録と、福井晴敏氏による解説が寄せられている。
 この講演録がまた異様な力の入れようで、何せ巻末のオマケにも関わらず30ページ以上も延々と「文明と文化」の違いについて、
 宇宙世紀の数々の事件と絡めながら語っているのである。
 人によっては、本編を読む以上に時間がかかるかもしれない。
 各言う私も、本書が復刊された2年前の学生時代に、この講演録を読んだのだが、不勉強故に全くと言っていいほど理解できなかった。
 しかし、学生時代の最後の時分にid:huyuha氏やid:Sharaku氏といった先生方を通してちょっとばかり勉強したことによって、
 なるほど、こんなことを言っていたのかとようやく理解できるようになった次第である。
話がそれたが、本書は数あるガンダム小説の中でもMS戦闘の描写が非常に巧みな作品である。
 もう何度も読んで結果を知っているというのに、読むたびに胸が高鳴ってしまう。
 外伝というマイナージャンルであること、そして小説であるということであまり手に取ってもらえない作品かもしれないが、
 我こそは!と自負するガンダマー諸氏には、ぜひご一読いただきたい作品なのである。