機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles 完全版 第1・2巻 夏元雅人 シナリオ:千葉智宏 角川書店

機動戦士ガンダム外伝」研究やってて良かったなぁと思った。ジオン公国軍のMS特務遊撃隊は「外人部隊」という別称があるのだけれども、私はこれをデータとしてまとめる際に「別称にして蔑称」という表現を用いたわけだが、本作の帯に「蔑称として外人部隊とも称される」との記述が。恐らく、制作側にとって「外人部隊」というのは蔑称との認識はなかったのだろうけれども、現状を考え当てはめるとここは蔑称という表現を用いる方が彼らの境遇を表し、よりリアルになると感じてそうしたわけだ。「べっしょう」という音を合わせたかったというのもある。それがこうした形で還ってくるというのは、ファンとして感無量。
うぬぼれ、とも言われるかもしれないが、唯一私しか指摘していない事柄が修正されている点を考えても、自説が取り入れられたと錯覚したくもなろうというもの。というのも、「デュシャン・ロートン」という人物があるエピソードに登場するのだが、連載時の彼の手紙には「R.D.」という名前で主人公に宛てるのである。これは彼の「デュシャン」というのは、ファーストネームではなくファミリーネームであったという節が強いことを意味する。(もちろん、ドイツ語や日本語のようにファミリーネームを先に書く表記の仕方もあるが)これをもうずいぶん前から自らのデータベース上で指摘していたら、今回の完全版の発行にあたって、ご丁寧に「R.D.」を訂正し、同じ手紙の場面においてデュシャンを先に、つまり「デュシャン・ロートン」の並びにしているわけである。これには思わず手を叩いて喜んだ。
作品としてはかなり手を加えてあり、さらに丸々書き下ろしのページもある。これによってストーリーが綺麗につながっている。なるほど、連載を休んだのは確かにこの完全版の作業があったのも一因だったようだ。その点は陳謝したい。