サクラサク上等。 三浦勇雄 イラスト:屡那 MF文庫J

サクラサク上等。 (MF文庫J)

サクラサク上等。 (MF文庫J)

上等。シリーズ全8編、堂々の完結!
シリーズ当初から、単なる鉄平とゆかりの成長喜劇だけではなく、他の世界、ここでいう第一世界と第二世界をもテーマに掲げ、
第一世界人には忘れられた心を、第二世界はその存在意義を取り戻していく物語でもあったわけだ。
全編通じて共通していたことは、三浦勇雄氏の流れるような文章による「勢い」が肝要であって、
これがあったからこその第1巻「クリスマス上等。」のカタルシスがあったといえる。
この「勢い」がシリーズ全編を通じて、徐々に強くなっていくものであったかは否であり、
それが不可能であるからこそ、「神様家族」では第1巻〜第3巻までの勢いの魅せ方を経て、それ以降はワザで魅せるといった手法が取られるわけだ。
それと同じことができていたかというと、残念ながらそういう形ではなかったと感じる。
ただ、1巻毎それぞれの起承転結は徐々に洗練されていき、「ジューンブライド上等。」や「フェスティバル上等。」で花開いたと読む。
最後の2編、「サクラ上等。」ならびに「サクラサク上等。」は最終3部作を通しての描き方が問題になるわけだが、
1巻毎の起承転結、「勢い」の抑揚は洗練されているのだが、複数の巻を通しての抑揚はまだ試行錯誤の段階にあったように見受けられる。
三浦氏はその「勢い」を武器に彗星のごとく現れ、彗星のごとくシリーズを完結させた。
今後はこの「勢い」をうまく魅せるワザを身につけるのか、それともワザなどに頼らない圧倒的な力を身につけていくのか。
それは次回作以降の課題として、ぜひとも注目したいところである。
単純な感想を記しておくと、エンターテイメントの名に恥じない大団円で読んでいて安心する。
そして鉄平とゆかりの関係が一歩進んだラストはやられた、と思った罠。
ところで、あとがきの東京都のK・Mさんってのは・・・・・・なのかな?かな?
→全然違ったんで忘れてください。(ぉ