Raytuel 「adveniat regnum tuum」 クロスロード

Raytuel氏の描く作品の絵師は非常に目を引く方のような気が。
前作の原建人氏のときは絵が目的の一つで、そして「いばらの森」という実績を踏まえての投資だったわけだが、それは正解だったと私の中では結論付けられている。
その氏が、今度は赤星健次氏の絵を持ってきたもんだからこれはやられた。
表紙だけで負けを認めて投資という選択を取ることになるわけだが、
イベントで手にとった際に、一度通過してからその表紙に気付いて慌てて引き返して購入したもんで、
どうも売り手側には奇異な行動に映ったようでその節は失礼いたしました。
何も考えずに、表紙だけで中身を想像しようとすると志摩子さんと乃梨子と栞さんに見えたり見えなかったり?
ところが物語の舞台は原作から少なくとも4年後の未来。
過去の山百合会は、ある意味伝説的な存在になりながら、時代毎の特色を持ち、その思いは受け継がれている。
各章がそれぞれ山百合会の人間の一人称視点で進んでいく形を取るが、中でも最終章の片山人美の章は秀逸。
彼女の姉であり白薔薇さまでもある箱宮サキの章で伏線を張りつつ、片山人美の章での転機は見事というほかない。
各薔薇毎に少なくとも一つはエピソードが描かれているが、本作は間違いなく白薔薇の物語と読み解くことができよう。
そして本作は前編であり、今回描かれなかった人物たちのエピソードは後編にて描かれるという。
これはまたしてもRaytuel氏の手腕にやられてしまったということか。
作品内容への期待はもちろん、次回の絵師は誰かということにも注目したい。