機動戦士ガンダムUC 第3巻 福井晴敏 角川書店

機動戦士ガンダムUC〈3〉赤い彗星 (角川コミックス・エース)

機動戦士ガンダムUC〈3〉赤い彗星 (角川コミックス・エース)

福井晴敏としてではなく、ガンダムとして読んだときに一番「あざとい」と感じるのが、この表紙の男。
「シャアの再来」とシャアの名前を使い、ましてや仮面に赤いモビルスーツと来たもんだ。
さて、この男。果たしてシャア本人か、それとも別人なのか、DNAだけは同じなのか。
既にマリーダの例があるから、さすがにクローンという安直なネタではないと思うが、かといって本人であってほしいなどという感慨はチリほどもない。
と、ここで一つ思ったのは、本作が福井晴敏の手による「ガイア・ギア」だったとしたら、ということだ。
となると、フル・フロンタル宇宙世紀0096年に甦ったアフランシ・シャアということか。
しかし、アフランシだとしても詰まるところはクローンなわけで、それもまた安直と感じるわけだ。
本人とかクローンを上回り、なおかつ説得力ある人物であってほしいのだが。
シャアを騙る全くの別人だったとしても、納得行く説明と表現であれば、それはそれでよし。
しかし、レウルーラの件に絡む描写は、ちょっと無理あるなぁと連載時も思った。
アクシズの落下阻止直後のロンド・ベルは確かにガタガタだったけど、レウルーラ艦長のライル中佐が絶望的になるほど、
地球を挟んで艦隊の反対側から続々と駆けつける88艦隊を始めとする連邦軍が到着していたわけで、
満身創痍のネオ・ジオンが、各サイドにこもったまま戦力を温存してた連邦軍救援部隊の包囲網を抜けられたというには説得力がない。
これを、本作の描写で押し通すならば、ガトー率いるデラーズ・フリートの生き残りが、連邦軍包囲網を突破してアクシズ先遣艦隊に無事たどりついたと言ってるに等しい。
それを納得させるだけの描写と、状況を提示できるというなら、それもまたアリだろう。
本作は、正直言ってそこまでの力はない。
だからこそ、ガンダムとして読むより、福井作品として「ガンダムから切り離して」読むという結論にいつも行き着いてしまうわけだ。