狼と香辛料 支倉凍砂 イラスト:文倉十 電撃文庫

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

絵師の文倉氏は、当方と同じく1981年生だったのか!
82年とか84年とか、当方より若くて活躍してる新進気鋭のクリエーターはけっこう聞くのだが、
1981年生でこうした方面で活躍してる人がきわめて少ないので、今後ますますの活躍に期待したい。
1981年は不遇の年なのか、不作の年なのか・・・。
アニメ版から原作へ流れた口なのだが、ちょうど増刷の谷間にあったようで本作を入手するのに非常に苦労した。
何やら、いつも同じことを繰り返しているような気がする。
さて、本作の感想。我が師匠がいたくお気に入りであるのだが、アニメ化を機にようやく読了。
アニメというファクターがあったおかげもあり、ホロの魅力にブーストがかかった状態。
映像化というのは、「消費の爆発」の一因としても有用であるのだろう。
師匠曰く、「元々文系ではない人間の作品なので、初期の作品は読みにくい。」
裏返すと、作品が進むごとにどんどん作品の書き方を身につけて読みやすくなっていくとのことであった。
そうした点をアニメ化でも踏まえたのか、アニメ版は原作第1巻の顛末へとうまくつながるように、第1話から伏線が張られていたことに気付く。
良い原作のために、良いアニメを作ったといったところか。
各分野が本領発揮すると、これだけいいものが生まれ、相乗効果を発揮するという見本であろう。
本の厚さの割には、さくっと読める手軽さもいい。
なるほど。2006年度ライトノベル部門第1位を受賞する作品だけのことはある。
そしてあとがきにもあるが、作者の支倉氏はトレード(株取引)するライトノベル作家としても知られている。
2008年1月の段階で発行部数の総計80万部とのことであるから、一部600円と見積もって大雑把に計算しても、その印税は4,800万円に昇る。
なるほど。トレードするには十分すぎる元金である。
あとがきの夢にもあるように、印税による資産を株によって増やしていくという考えもよくわかる。
が、風のウワサで支倉氏は2007年中に任天堂株に手を出したと聞いた。
当方がトレードを始めたのは2007年5月頃だが、当時の任天堂株は一株4万〜5万円程度だった。
それくらいだったら、私にも買えると思う方もいるかもしれない。
ここで、株取引について補足しておくと、株を購入するには最低購入しなければならない株数「最低単元」が各株式会社ごとに取り決められている。
ちなみに、任天堂の最低単元は100株からである。
つまり、当時の価格にして最低400万〜500万から開始、ということになるわけである。
元々、任天堂株を購入できる投資家というのは、ある程度まとまった資産のある者である。
支倉氏もご多分に漏れない。
ただ、未だに世界をくすぶっている「サブプライム」問題が起こり始めた2007年8月頃のこと。
任天堂株は一株6万円までのぼりつめ、そして瞬く間に5万円程度まで暴落した。
100株所持していれば、100万円が一度に吹き飛んだ計算である。
まさに、ロレンスも舌を巻く下げっぷりだ。
支倉氏は無事だったのだろうか・・・というのが、風のウワサの締めくくりだった。
その後、一時的に落ち着きを取り戻したアメリカ経済。
真の暴落は2008年に待ち受けていたわけだが、つかの間の静寂が訪れる。
任天堂株は回復し、あろうことか一株7万円をつけた。
ちょうど2007年10月から11月頃。
日経新聞が、トヨタ任天堂時価総額について華やいでいた頃だ。
そして年が明けて2008年。サブプライム問題の根深さが明らかとなり、日本の株価総崩れ。
任天堂株も、一株5万円を割る事態になった。
7万円が5万円である。今度は、100株ならば倍の200万が吹き飛んだことになる。
それが、300株、400株ともなればその損害は3倍、4倍にもなる。
大丈夫。経済の物語を描く支倉氏ならば、きっとこの事態も乗り切ったに違いない。
・・・と思いきや
1月11日付けの近況を見て愕然とする。国産車4台分の損害・・・。
さすが支倉氏。角川株で10万の含み損を抱えて右往左往した当方とは、スケールが違う。
(とはいえ、投資資本の10%が吹き飛べば、大半の人間は右往左往するだろう。)
原作はもちろん秀逸な作品だが、個人的には支倉氏自身の経済活動にも着目したいと思う。