機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079- 第1-3話「ジャブロー上空に海原を見た/光芒の峠を越えろ/雷鳴に魂は還る」

キャラクターの3D描写がより滑らかに、クリアなものになった点は素直に評価すべきだろう。
その一方で、かつての人形を用いたSF作品とイメージがかぶる。
より実写映画的な描写を目指すのか、それともアニメ色は残し、2D的な表現を加えるのか、
そのあたりがどうなるかが、IGLOOシリーズのキャラに関しては技術的課題ではあると思われる。
ストーリーに関して言及すると、資源に乏しいジオン公国が、使い捨て兵器を連発することに違和感を覚える。
これは、それだけ切羽詰っていることを示す意図もあるのかもしれないが。
そして、そのために何度も同じパイロットを地上で回収し宇宙へ打ち上げるのは、明らかにコストパフォーマンスに合わない。
つい数日前に行われたジャブロー降下作戦において、ガウは多大な損害を受けているので、1隻といえど非常に貴重なはずである。
そんな貴重なガウを試験とは言え一人のパイロットを回収するために、損失のリスクにさらす点は明らかにコストパフォーマンスが悪い。
(そして結果的に損失しているので、なお悪い。)
このあたりが、ガンダム的な現実味がないと感じさせる。
ただし、構成としてはホルバインのキャラ性を始めしっかりとした盛り上がりを見せるので、
(前半のギャグの試みは謎な部分の多い仕様だが)
その点に関しては万人に対して太鼓判を押してオススメできる内容だろう。
時折コミカルな演出を入れたがるのは、アメリカドラマ的な構成を意図しているからなのかもしれない。
光芒という言葉がサブタイトルに取り入れられているだけあって、光の表現に気合が入っている。
太陽光という自然光と、ソーラ・レイという人工の光の対比も注目すべき点だろう。
映像表現以外では、モニクの弟であるエルヴィンの死がエンターテイメントとしては疑問。
その点に関しても、エンターテイメントな映像作品としてよりも、ドラマ的な映像作品であることを優先した結果のように思える。
デザインワークスに「機動戦士ガンダム00」にも参加した柳瀬敬之氏が参加。
ルウム以来の大規模艦隊戦の迫力はさすがとしか言いようがない。
ゲルググで出撃したカスペン大佐が、オッゴをかばって戦死するなど、短い演出の中にもこだわりが感じられる。
キャラクターを含めたフル3DCGにおけるガンダム作品は成立するのかといった試みは、映像作品としては一定の成功を収めたと言えるだろう。
これが興行的に成功したのかというのはまた別の話である。
フル3DCGによる長所短所がこれで明確になったと思われるので、今後の映像作品にて、3Dを使うべきところ、2Dを使うべきところを
うまく見極めてさらなる作品が生み出されることを期待する次第。
皮肉なことに、現状ではそれが「マクロスF」にて具現化されており、「ガンダム」で具現化されるのは、まだしばらくの猶予が必要なようだ。