10年先を読む長期投資 澤上篤人 朝日新書

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書)

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書)

短期の投資については、なんとなく感覚をつかんできたので、長期についても学んでおくべきと思って手に取ったのだが、典型的な悪書だった。
流行りものだからといって、必ずしもいい本とは限らないというお手本のような本。
悪書と判断したのは2点あって、1点目は書き方の問題。
持論の優位性を示すために、対照を下において徹底的に皮肉るのだが、その点が非常に鼻につく。
そして対照に挙げられた事例が、必ずしも劣っているわけではないという点を棚に挙げて持論を展開するので説得力がない。
もう1点は、肝心の長期投資に関する事例がブレていて、本当の意味で長期投資を学びたい人に誤解を与えかねない構成・書き方になっている点。
これなら、ウォーレン・バフェットの自伝を描いたマンガを読んだ方が、よほど長期投資の勉強になる。
経済的自立の話と社会貢献の話を絡めて触れるのだが、
欧米の社会的貢献をしている人々は、経済的な自立を遂げていようといまいと、寄付などの社会貢献を行っているのであって、
経済的自立を遂げたから社会貢献をしているのではない。
このあたりも大きくを誤解を与えてしまう書き方と言える。
長期投資を学ぶには、ウォーレン・バフェットに関する本がいいが、「お金は銀行に預けるな」(勝間和代)も貯蓄と投資の関係性を見直すという点では勉強になる。
本書は、貯蓄と投資の関係を見直す時期に来ているという点では確かにその通りなのだが、そこから具体的な方策へ向けての方向性と、その伝え方がよくない。