聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス)3 三浦勇雄 イラスト:屡那 MF文庫J

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス)〈3〉 (MF文庫J)

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス)〈3〉 (MF文庫J)

毎回セシリーのコスプレを表紙化してくれる第3弾は男装の麗人
おっぱいのせいで前が締まりません!というわけではないようだった。残念。しかしヘソ!!
肝心の内容なのだが、「イコノクラスト!」第4巻の一文「香芝省吾。十七歳。高校生。初体験――強姦。」を思い出した。
しかし、あの一文が読者に絶大なる衝撃を与えることになるのに対して、本作のショッキングな場面にはそこまでの力がないように感じた。
事実を淡々と告げるというか、出来事を淡々とつづっているようで、読む側が襲われているヒロインに感情移入すればいいのか、
それとも襲うダーティーヒーローに感情移入すればいいのか、そのあたりがブレているように思う。
前述のイコノクラストの場合は、主人公がヒロインを強姦するというトンデモな場面なのだが、主人公への感情移入が非常にスムーズに描かれている。
これは非常に瑣末なワンシーンの気になったことなのだが、第3巻目にしていよいよシリーズを書く上での問題に直面しているのではないかと思わされる。
第1巻は新シリーズの導入であり、第2巻は導入を受けて話を膨らませていく形である。
となると、第3巻は起承転結でいうところの「転」となるモノが来て、読む者にインパクトを与える必要がある。
ゼロの使い魔」は第1巻、第2巻で我慢に我慢を重ねたものを、第3巻における「転結」という形で一気に爆発させて読者にカタルシスを与える。
その手法は「神様家族」でも読み取れる。
三浦氏の前シリーズである「上等。シリーズ」では、第4巻にて上記の「転結」という爆発的なカタルシスをもって、前半戦が綺麗に幕を閉じる。
そういう意味では、その第4巻にあたる次巻にて、大きな転換点と大きな一つのカタルシスを表現しようとしているのかもしれない。
それならばいい。
ただ、一つ気になっているのは、前の「上等。シリーズ」の第2巻と第3巻が4巻へとバトンタッチするために、話を大事につないだのに対して、本作はどうだったのかという点だ。
ここまでの流れを整理すると大雑把には、世界観の説明となる導入(第1巻)→他国の事情を含めた数々の新キャラの投入(第2巻)→第2巻を受けての追加説明(第3巻)といった形となる。
こうしてみると、変則的に第2巻で一度「転」が生じている可能性があり、第3巻は「承」に相当する話だったとも取れる。
この特殊な技法が、では第4巻でどのように活かされるのか?
それをもって初めて、この第3巻に対して正当な評価を下せるのかもしれない。
現状、単巻での評価は不能とさせていただきたい。