弾言 成功する人生とバランスシートの使い方 小飼弾・山路達也 アスペクト

弾言 成功する人生とバランスシートの使い方

弾言 成功する人生とバランスシートの使い方

技術の専門家は、専門分野についてのみ語ってくれればいいという見本みたいな本。
専門分野、著者の経験談、著者がしっかり調べた事項に関しては非常に興味深く読める。
反面、なまじっか成功経験があり、なおかつ有名なブロガーであることが災いして、
非専門分野や知らないことに関しては、非現実的で悪い意味での夢物語や誤解を招く表現しかできていないありさま。
知らないことは語るな、という反面教師としては最適だろうと読んでいて思った。
特に、富裕層に関する間違った認識と偏見は筆舌に尽くしがたい。
富裕層について語るなら、せめてロバート・フランクの「ザ・ニューリッチ」か、日本の富裕層に関しては本田健氏の著作か、
高岡壮一郎の「富裕層はなぜYUCASEEに入るのか」を最低限、参考書籍に挙げられるように一読すべき。
上記のいずれかを読めば、小飼氏の富裕層に対する認識が完全に逆であることがわかるはず。
第1にアメリカ経済の大半を動かしているのは、富裕層のマネーであるという点が彼の言う「金持ちはカネを使わない」という認識に反する。
第2に、日本の富裕層については「使わないのではなく、効果的に使う環境が整っていない」のである。
ニューリッチと呼ばれる人々ほど、合理的で効率的な経済活動を行う存在はなく、
なぜ彼らが日本でアメリカのように使えないかは、使ってもムダになるものしか存在せず、社会貢献につながるような大型のマネーの使いどころがないからだ。
それを認識できない金持ち批判は、ただのやっかみや嫉妬に過ぎない。
彼の場合は、成功者なのでやっかみや嫉妬というよりも、トンデモ学者がトンデモ説を声高に叫んで世間を騒がせている、といった表現の方が正しいかもしれない。
といった具合で、彼の非専門分野については文句としての感想しか出てこないが、彼の専門分野について語る分には、うなずける個所や感心する個所が多々あるのも確か。
それだけに、「蛇足」的な知ったかぶりが惜しいと感じる一冊だった。
そして本書の最大の難点は、彼が有名ブロガーであるがゆえに、ブログをそのまま本に落とし込もうとした点にあると思う。
そのせいで、ひどく読みにくい体裁の書籍に仕上がってしまい、それだけで読むのに難儀した。
文中の節々に「(笑)」とされても、バカにされてるのかと思う。
彼のブロガーとしての評価を疑うのではない。彼の著者としての評価を疑うのだ。
書籍として出すからには、本人が著者としての能力に欠けるのならば、対談でも代筆でも良いから、もっとうまく本の形に落とし込んでくれればいいのにという思いが残った次第。
文中に挙げた書籍を参考までに。
ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態
普通の人がこうして億万長者になった――一代で富を築いた人々の人生の知恵 (講談社+α文庫 (G166-1))
富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか