ほしのこえ 大場惑 原作:新海誠 イラスト:竹岡美穂 MF文庫ダ・ヴィンチ

ほしのこえ The voices of a distant star (MF文庫ダ・ヴィンチ)

ほしのこえ The voices of a distant star (MF文庫ダ・ヴィンチ)

MF文庫Jにて出版されていた大場版小説ほしのこえが、MF文庫ダ・ヴィンチにて加筆修正を加えた上で新装刊。
大場版ほしのこえに対する思いは既に旧版のときに述べているが、本書は「雲のむこう、約束の場所」と「秒速5センチメートル」を通して得た新海誠の男女の恋愛物語観を踏まえて読む形となった。
この3作品の最大の違いは、「ほしのこえ」が男女の伝えたい想いが相手に伝わった上で成就しているのに対して、
「雲のむこう〜」では想いが伝わらなかった上に成就せず、「秒速〜」では伝わったにも関わらず成就しないという形に変化している。
これは、新海誠の持つ恋愛物語に対する美しさの表現の変遷と捉えられないかと感じている。
ただ、個人的には新海誠は文学者ではあっても、エンターテイナーではないなぁというのも同時この3作品を通じて感じた。
おそらく、最もエンターテイメント受けするのは、ハッピーエンドに近い形を迎える「ほしのこえ」だろう。
他の2作品は、非常に美しく完成されているが、個人の嗜好によっては拒絶されうる。つまり、エンターテイメント(万人)向けではない。
この3作品を通じて、ボーイ・ミーツ・ガールの物語を美しく完成させてきた新海誠が、過日発表された新作にてどのような表現を行うのか興味深い。
あくまでイラストの印象だが、また一段と見る人(私のようなエンターテイメントを好む人間)にとっては、ひどく残酷だが美しく完成された物語が出てくる気がするのだが、果たしてどうか。