データガンダム キャラクター列伝 【宇宙世紀編I】岡崎昭行 角川書店

2010年4月末現在で、全94回掲載された「データガンダム」のうち、宇宙世紀の人物たち35人の分を収録した単行本。
データガンダムに選定されたキャラクターについて、現時点では基本的に映像化された作品のキャラクターたちが取り上げられており、例外的に著名なMSVのキャラクター(ジョニー・ライデンなど)が取り上げられたに留まる。
掲載誌には、宇宙世紀以外のキャラクターについても取り上げられているが、今回の単行本化にあたっては宇宙世紀に限定したようだ。
本書は、皆河有伽の編纂したガンダムオフィシャルズと似た手法、すなわち各キャラクターに関わる記述を広く拾い集め、その真偽は断じずに掲載する手法を取っている。
そのため、通常の文献研究においては、資料の重要度によって偽書とされうるレベルのものも、最も重要度の高い原本レベル(いわゆる公式設定)の記述と同等に記述されているように見えるのが問題である。
この問題をさらに助長しているのが、「参考文献」の提示の仕方である。
本来の研究論文では、文献を参照したのならば、参照箇所ごとに元文献を提示するのが通例であるが、本書は巻末にどんぶり勘定で使用した全ての文献を機械的に羅列しているにすぎない。
これでは、本書を参考文献としてさらなる研究を行う際に、元文献をたどって確認が行えないという論文として致命的なエラーが発生している。
巻頭の言葉にある「シャーロキアン」や「トレッキー」に通じる書籍として出すからには、一般的な研究論文に引けを取らない形式での作品としていただきたいと切に願う。
本書181ページ「一年戦争時のMSパイロットリスト その2」のような研究者が見れば一目でわかる間違いが、誰のチェックにも引っかからずに市場に出てしまうのは非常に残念である。
これは、一般の書物で言うところの「あってはならない」もしくは「プロとして恥ずかしいレベル」の間違いである。
こうした際、もし間違いでないかどうか検証するためにも、該当箇所ごとの参考文献の提示は必須であると断言する。
※1:ユウ・カジマ中尉の所属は「第11独立機械化混成部隊」であるが、本書では「第04中隊」と誤記している。
※2:ラリー・ラドリー少尉は「MS特殊部隊第三小隊」の所属であるが、「第11独立機械化混成部隊」と誤記している。
上記2例はほんの一例であるが、該当リストは根本的な部分の間違いが、誰にも指摘されていないというもので、出版前の検証が行われたのか甚だ疑問である。