シュヴァルツェスマーケン 第1巻 神亡き屍戚の大地に 原作:吉宗綱紀(アージュ) 文:内田弘樹 イラスト:CARNELIAN ファミ通文庫

マブラヴ オルタネイティヴ」における1983年時点の東ドイツにおける人類とBETAとの最前線を描いた作品。
BETAのユーラシア大陸西進は着々と侵攻しており、欧州は刻一刻と追い詰められていく。
その最前線たるドイツは第二次世界大戦後の冷戦構造の影響で、東のドイツ民主共和国と西のドイツ連邦共和国に分裂しており、
2つの国はBETAを目前にしても手を取り合えず、BETAの蹂躙を許していたのであった。
東ドイツ軍の衛士であったテオドール・エーベルバッハ少尉は、国連軍として派遣されていた西ドイツの衛士、カティア・ヴァルトハイムを救出する。
カティアはある目的のために、東ドイツに亡命することになるが、そこは自分の命がいつ果てるとも知れぬ地獄との境界線であった。
CARNELIANのイラストがマブラヴの世界観と意外にもマッチングしており、そこに内田氏の硬派なミリタリー文が加わることで、紛れもないマブラヴオルタの作品として仕上がっている。
東ドイツという特殊な政治体制の国で、なおかつBETAとの最前線という生きている人間にとってはこれ以上ないというほどの極限状態が描かれる。
だが、そこにあるのは必ずしも悲壮感ではなく、そんな世界で這いつくばってでも生き抜こうとする強い意志を持つ人間の姿なのである。