「早稲田祭2013 福井晴敏&皆河有伽トークショー!」 早稲田大学ガンダム研究会

2013年11月3日、早稲田大学大学祭にて早稲田大学ガンダム研究会主催によって行われた福井晴敏氏と皆河有伽氏を招いてのトークショー
当日の模様を概略にて記録を残しておく。
以下、編者の拙い理解力により、当日の本人たちの意図した発言と一致しない可能性を含む点を、どうかご了承願いたい。

福井氏、皆川氏、入場

スタッフに案内され、会場へ裏手から登場する両名。
だが、裏口からの入場だったので、まさか扉を開けてすぐに聴衆が待ちかまているとは想定しておらず、トークショー開始前から面喰っていると福井氏。(会場、笑)

自己紹介がてら、福井氏と皆川氏それぞれのガンダムとの出会い

福井氏(以下、F氏):小学校5年生のとき、ダイターン3最終回にて放映された、1stガンダムの予告が出会い。線がギチギチに描き込まれた作品が始まる、という印象だった。
皆川氏(以下、M氏):同じく、ダイターン3を見ていたので、予告で見たのが出会いということになる。このとき、中学2年生だったので本放映のときは中学3年生だった。
F氏:えっ!?極力年齢の話題はさけようと思ってたのに、自分から振るの!?
M氏:それは前世(?)の自分なので大丈夫です。(会場、笑)
M氏:画面に一つ目の巨人と「君は生き残ることができるか?」のナレーションが相まって、強く印象に残り、1話からずっと視聴し、クラスの同級生たちに布教して回った。
F氏:予告は見たものの最初から追いかけておらず、飛び飛びで見てしまったためによくわからず、結果視聴しないままだった。その後、模型雑誌でのガンプラ紹介が印象的で、ガンプラブームが来る前からガンプラを組みまくっていた。
M氏:高校生となり、ガンプラは買って作ってみたけど、途中で組むのをやめてしまったのが多かった。
F氏:高校生だと、もうプラモつくらなくなっちゃうんだよねぇ。
M氏:その代わり、当時のコロコロコミックコミックボンボンを読み漁っていて、「プラモ狂四郎」を追っていた。
F氏:1stが終わって、Zまでの空白の期間のときはどうしてた?
M氏:もともと、冨野監督のアニメ作品を見ていたので、その間もずっと冨野アニメを見ていた。当時、まさかガンダムの続編があるとは思ってもいなかった。Zの展開に冷めた目というか、驚きをもってみていた。

ガンダムにおける「リアリティ」の表現とは?

M氏:小説での表現について、文字はアニメに比べてリアリティがどうしても弱くなる。映像は見た目という説得力があるけれども、小説ではリアリティをもたせるためにどのように描写するかが重要。ノベライズとして書かせてもらった「機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY」という作品において、冒頭でMSの巨大さを表現してあげたいと、特に気を使って書いた。
(編者註:上述の作品の本章冒頭の書き出しは、ザクの大きさ、重量感やヒートホーク、ビームサーベルによる溶断など、リアリティを感じさせるための描写から始まり、読者にその光景を導こうとしている)
F氏:文字でリアリティをもたせるために、自分の中で実際のものでたとえると何になるか、がピタッとはまるとうまく表現できる。ガンダムUCのときは、「ビーム」を実際の何とたとえるべきかずっと考えていて、「雷」という答えにたどりついた。次に、MSの18mという「巨大さ」にリアリティを持たせるためにどうしようかと悩んでいたのだが、全く別の取材のときに大雨の水を逃がすための地下貯水施設の柱を見せてもらって、それが18mだった。その柱の大きさがMSデッキなんだととらえると、MSの巨大さが自分の中でうまく結びついてくれた。

機動戦士ガンダムUC」を引き受けた経緯

F氏:一番はじめ、安彦良和先生がなぜ「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」を始めたのか気になっていて、安彦先生との対談を希望してガンダムエース編集部にお願いした。世界にむけてガンダムを発信するときに、ガンダムの画を更新したいという思いもあったのではないかと自分の中で、一つの結論を得た。そのときの編集長だった古林氏が本当に軽い気持ち、ノリで「なんなら、福井先生も描いてよ。福井先生が描くなら安彦先生が挿絵を描いてくれるよ」と言い出して、じゃあ何か書いてみようかというくらいのニュアンスで動き始めたのがきっかけだった。
F氏:最初に考えたのは、完全にお遊び企画で「スペースバンダイ(仮)」というものだった。内容は、宇宙世紀バンダイ社員が、1年戦争アムロが持っていたハロを見て、これをぜひ商品化したいから版権をください!とアムロにお願いしにいくお話だった。ただ、1年戦争後にアムロとの連絡が全く取れなかったので、モーレツ社員である彼が、地球連邦軍やのちのティターンズになるであろう怖い人たちの妨害を振り切りながら、なんとかアムロのもとを目指すというドタバタ劇だった。会議の場でその内容を企画案として提出したら、会議室は大爆笑に包まれた後、「福井さん、マジメにやってください」と言われてボツになった。
F氏:次に考えたのは、「機動戦士ガンダムZZ」に出てくるムーン・ムーンのショート・ストーリーを考えたのだが、これもまた編集部から「福井さん、そういうんじゃないんです。もっと大きな話がいいんです。」とボツにされてしまった。
M氏:そこからどうやって、ガンダムUCの壮大なお話が思いついたの?ミネバ様のこととか・・・。
F氏:いや、実はそのムーン・ムーンの話を考えていたときの下調べで、ミネバのこととかガンダムUCにつながる要素はもう出てきていて、もっと大きな話ということで掘り下げていったときに、キーとなるユニコーンが先にあって、宇宙世紀がUC○○年と表現されていると気付いたときに、この作品は宇宙世紀全体を見通す物語として走り出せると確信した。

機動戦士ガンダムUC」を書くにあたって

F氏:企画はできたので、あとは走るだけなのだが、絵づくりから模型化するためにバンダイまで橋渡しできる人ということで、カトキハジメ氏に声をかけさせてもらったのだが、カトキさんからは「福井さんのガンダム深度ってどのくらいですか?」「このユニコーンって機体、ガンダムになると角が割れてユニコーンじゃなくなるけど、そのあたりの矛盾をどうこの作品に落とし込むの?」といったやり取りがあって、口説き落とすのに時間がかかった。安彦さんに絵をお願いするにも、言いだしっぺの古林さんが及び腰になってしまって、結局二人からOKをもらうのに半年間かかってしまった。
M氏:ユニコーンの場合は、あのタペストリーのような歴史的な裏付けのある本物を出したのが良かった。
F氏:あのタペストリーは、実はカトキさんから矛盾を突っこまれたときに見い出した要素で、途中からいかにカトキハジメを説得してやろうかという気持ちだった。逆に、我々の世界にあるもので、どうしても取り込めないものもある。
M氏:ケータイは宇宙世紀にあってはならない(笑)
F氏:宇宙世紀に2ちゃんとかあったら、アムロとかカミーユとか、絶対ハマってるからね。(会場、爆笑)

質疑応答

時間の関係で、質疑応答はネット上で募集のあった事前質問4つのみ。

F氏:男というものは少なからず自意識過剰でありマザコンである。シャアという男は美形で若くして成功と挫折を味わって、その最たる例。良くも悪くもだからこそ「かわいらしく」魅力がある。逆に、ガンダムUCフル・フロンタルというキャラは「器」であらねばならなかったので、シャアから「かわいらしさ」を取り払った存在として描いた。

  • 質問2:皆川氏へガンダムオフィシャルズ第2弾について

M氏:ガンダムオフィシャルズは、自分の中では「資料」というよりも宇宙世紀の「ノベライズ」という感覚だった。そういう意味ではガンダムUCが、今は宇宙世紀のノベライズをしていると感じているので、もし第2弾をやるならば自分の中でガンダムUCとは異なる形を見つけなければならないと考えている。

  • 質問3:お二人へ小説を書く上で欠かせないもの

M氏:外で仕事をすることが多いので、資料をコピーしたものをまとめた袋や、スキャンした資料のデータを持ち歩いている。
F氏:自分は中でないと仕事ができないのだが、タバコが手放せない。あとはウーロン茶。

  • 質問4:お二人へ自分はガンダムキャラで誰に似ていると思うか(自作キャラ除く)

M氏:器としてという意味で「フル・フロンタル」。
F氏:若い頃の自分は感情がリンクしていたカミーユ・ビダン。彼が怒るところで自分も起こっていた。最近は、リュウ・ホセイかなと思う。