機動戦士ガンダムSEED DESTINY -EDITED-

機動戦士ガンダムSEED」のサイ・アーガイル役を務めた白鳥哲氏ナレーションによる総集編。世界解説が加えられていたとは言え、総集編以外の何者でもないことはしっかりと確認しておかなければならない。
世界情勢の解説がなされていたのだが、たとえ建前でも解説を売りにするならば、もっと詳細な情報を提供できなければならないと思う。今回の世界情勢マップも、あんな短時間の表示では確認する間もなく切り替わってしまう。そしてさらに大事なのは、「なぜカーペンタリアとジブラルタルザフト、プラント擁護国なのか?」という点のはずだが、それが一言も語られていない。「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY」において、カーペンタリア基地のある大洋州連合がプラント寄りの理由が語られはしたが、ジブラルタルに関してはそれがない。そして、一度地球連合の軍門に下ったオーブ連合首長国が、なぜ再び中立国となりえたのかについての経緯もない。以上のことから、今回は「世界解説」を謳い文句とした総集編だったと結論付けられよう。
オーブ連合首長国が再び中立国となりえたのは、恐らくユニウス条約による「国境線を戦前のものに戻す」というものが効いたのではないかと考えられる。地球連合としては元からザフトに協力していた国家、地域を除いてザフトに制圧されていた地域を取り戻したかった意図がある。しかし、これを盛り込むことによって、再びオーブの独立を認めることとなる。両者を天秤にかけたとき、前者のメリットが後者のデメリットを上回ったということだろう。そして仮にオーブが独立したとしても、再び取り込むことができるとの打算もあったのだろう。(そしてその目論見通り、オーブは地球連合へと取り込まれる。)ちなみに、なぜオーブ連合首長国公用語が日本語なのか、については「シャア専用ブログ」が詳しい。

最近スレやニュースサイトさんで「何故日本語を使っているのか」という疑問をよく見かけますが、それはオーブの旧宗主国が日本だったという設定がアストレイにある為。東アジア共和国から離反し、日本を離れた勢力かと思われます。(日本列島自体は東アジア共和国に属しています。フジヤマ社もそこでしょう)

ジブラルタルが依然としてプラント寄りになっている理由は推測しかできないが、我々の世界のパナマのように、プラントにジブラルタルの宇宙港を提供もしくは貸与することでザフトによる保護を求めたのではないかと考えられる。オーブのように中立を保とうとするならば、何らかの武力が必要となる。しかし、自国の武力を持つにはそれなりの資本、資金等が必要となる。自国でそれをできないのであれば、どこかに協力を依頼するしかない。地球上の宇宙港や基地施設を利用できるならば、宇宙にしか拠点のないプラントにとってはこれ以上のありがたい申し出はない。地球上にしか存在しない資源(プラスチック製品などは地球の石油に依存するほかない)を得るためには、どうしても地球上の拠点が必要となるからだ。こうした取引の下、ジブラルタルとプラントの共存関係が成立しているのではないか。
念のため、カーペンタリア基地のある大洋州連合がなぜプラントと同盟関係にあるかについて、コズミック・イラ社会学を専攻するからには触れておかなければなるまい。元々プラントとは国家ではなく、各国家(大西洋連邦ユーラシア連邦、東アジア共和国)が所有する植民地的なものだったわけである。しかも、プラントはファースト・コーディネイターであるジョージ・グレンが設計しただけのことはあり、エネルギー・工業生産において地球上からは無視のできないほどの生産力を誇っており、プラントを所有するか否かが各国の生産力を左右していたほどである。(「プラント」には工場等の意味があるが、これは地球連合の各国が込めた皮肉でもあろう。)しかし、プラントを所有できたのは一部の大国だけで、大洋州連合等の国家はその経済的利益から取り残されていたのである。また、プラントを所有する各国はプラント側に一切の食料の生産を禁止しており、プラントと地球連合側の関係は険悪なものに。このとき、食料の貿易に応じたのが大洋州連合であり、南アメリカ合衆国であった。(しかし、南アメリカ合衆国はその後大西洋連邦に併合されてしまう。)そこへきて、「血のバレンタイン」を端に発するプラントと国家間の戦争勃発。戦争開始とともにプラントは地球連合各国からの独立を宣言し、非地球連合参加国(この時点では大洋州連合と南アメリカ合衆国)には物資の供給を行う約束を取り付けるわけである。大洋州連合のあるオーストラリアとプラントの結びつきが強いのは、こうした背景があるわけである。
何やら、今日の感想が「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の世界解説化したような気が。世界解説を謳うならばこれくらいの情報は提供していただきたいものです。