機動戦士ガンダムSEED DESTINYについて考える 第29回

レイ・ザ・バレルの出生について

日経キャラクターズ! No.11」において、レイ・ザ・バレルの出生について、以下のような推測が為されている。

悲しい話であるが、レイはラウ・ル・クルーゼのための臓器提供用生体パーツとして作られたという説が有力だろう。また、ラウとしては、我が身に何かあったときに、後を引き継がせるために、自分のクローンであるレイを利用しようとしていたとも考えられる。そうした自分の生い立ちを知ったレイは、悲劇を生み出す源となる人間の欲望のない社会を目指して、デスティニープラン実現に我が身を捧げることになったのだろう。

この説からすると、レイを生み出した主語、張本人はラウ・ル・クルーゼということになる。そしてその目的は臓器提供用、または後継者となっているが、これは相反する目的だと言わざるを得ない。臓器提供用クローンとはすなわち、そのクローンは一つの生命体ではなく、一つの道具として生み出されたということになる。後継者とは、自らが認め後を託す人間のことである。道具と人間、180度違う目的を結び付けようとするのは無理がある。
では、なぜレイは生まれたのか?言い換えるならば、なぜレイは作られたのか?まず、これまで明らかになっている事実を挙げる。

そもそもラウ・ル・クルーゼが生まれたのは、息子ムウ・ラ・フラガを後継者とすることを拒んだアル・ダ・フラガが自身と全く同じ遺伝子のクローンを後継者としようと目論んだことにある。そこで、遺伝子研究の第一人者であったユーレン・ヒビキ(キラ・ヤマトカガリ・ユラ・アスハの実父)に自らのクローンの製作を違法行為と知りながら半ば強引に依頼する。クローンの製作そのものは成功し、ラウ・ル・クルーゼは誕生する。そしてアル・ダ・フラガはこの時点ではラウを後継者とするつもりでいたようだ。その後、成長したラウをムウと引き合わせている。しかし、ラウはフラガ家の屋敷に火を放ち、ムウ以外のフラガ家を抹殺することになる。この行為の裏には何があるのか?
ここから先は推測になるが、ラウのテロメアが短いことが判明し、クローン体として完全体ではないことを理由に、アルはラウの後継者としての認定を取り下げる。そして、新たなクローンの製作をユーレンに強要する。このとき誕生したのがレイだ。不要の烙印を押されたラウは、アルと世の中に絶望し、アルを殺害。世界へ復讐する機会を探りながらプラントへ渡ったのであろう。同時に、自分と同じ不遇を背負ったレイを連れ、当時の遺伝子研究の第一人者であったギルバート・デュランダルに出会う。
このように、レイはラウの予備として、というよりもアル・ダ・フラガの予備として作られたと考えた方が自然である。アル・ダ・フラガという一人の繁栄を極めた人間の驕りが、ラウとレイという二人の犠牲者を生み出したのだ。レイがラウの後継者のような立場になったのは、デュランダルという後見人による結果に過ぎない。