機動戦士ガンダムSEED DESTINYについて考える 第31回

プラントの独立時期

オフィシャルサイトの「D.I.Q.」第11回にてプラントの独立について触れられているが、そのコメントが少々いただけない。

ユニウス条約のごたごたに便乗して、独立したのでしょうか?

これは、「機動戦士ガンダムSEED」ならびに「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の歴史、すなわちコズミック・イラの歴史を知らない人ならではの発言と言える。まずは、年表をご確認いただきたい。コズミック・イラ70年2月14日、いわゆる「血のバレンタイン」から4日後、プラント最高評議会議長のシーゲル・クラインは「黒衣(喪服)の独立宣言」と呼ばれる独立宣言を行っている。この独立宣言が認められていれば、この時点でプラントは国家として成立していることになる。
そもそも、国家の独立を承認するのはどこか。一つは国際機関が一番明確である。現在の我々の世界では、国際連合に国家として認められるのが一番てっとりばやい。もう一つは、国際的に影響力のある国家に、独立国家として承認してもらう方法である。
プラントのこの独立宣言を受け、国際機関である地球連合はこれを拒否した。しかし、大洋州連合は同年2月20日にプラント支援を表明し、親プラント国家となっている。当然、この際の外交交渉においてこの独立宣言の承認が盛り込まれたものと考えられる。本来であれば独立国家であった南アメリカ合衆国もプラント国家寄りであったが、有無を言わさずに大西洋連邦に併合されている。
この時点でプラントを承認する国家が存在する以上、プラントは独立国家となっていたと言える。国際機関、地球連合によるプラントを国家として認定したのは、ユニウス条約締結時であるが、これは「どさくさ」と呼ばれるものではなく、正式な手続きに乗っ取って行われたものである。なぜならば、ユニウス条約の条項に「地上の国境線及び国家は戦前70年2月10日の状態に復旧する」ならびに「ジブラルタル、カーペンタリアは条約監視団ならびに在地球公館として残す」との2条項がある。前者は飽くまで地上に関する条項だが、逆に言えば、宇宙(プラント)に関しては承認するから、地上のザフトの勢力域を元の地球側に返還せよといっているわけである。そして、ジブラルタル、カーペンタリアにおける公館の設置の承認は、外交相手が国家であることを認めている証拠とも言えよう。
考え方、捉え方にもよるが、最速でプラントはコズミック・イラ70年の開戦時に独立を果たしていたとも言えるし、ユニウス条約を締結し地球連合に認めさせたコズミック・イラ72年3月10日に正式に独立を果たしたとも言える。いずれにせよ、

ユニウス条約のごたごたに便乗して、独立した

などということは、国家の承認要件とコズミック・イラの歴史を知っていれば、ありえないということがわかる。