読後のあれこれ

これまで読んだMF文庫Jの中でもきわめて特殊な部類に入ると感じる。
桑島由一の「神様家族」、ヤマグチノボルの「ゼロの使い魔」は単巻の中で山場を後半に配置し、徐々に上昇させていく手法。
そして両者はシリーズを通して徐々に上昇と下降をうまく組み合わせている。
三浦勇雄の「上等。シリーズ」は前半の勢いをキープしたまま、ラストで火事場のバカ力を発揮し、そのまま押し切るタイプ。
ただ、シリーズを通して押し切ることは難しいようで、ここのところ息切れ感もある。
これを抑揚としてうまく使い分ければ、一気に化けること間違いない。
上記のシリーズはいずれも主人公を成長、見る者の気持ちを上昇させていく典型的な作品だが、本作は逆に読み進めるほどに下降していく。
ゆえに、気分が沈みがちなときに読むことをお勧めしない。
だが、現在の最新刊(4巻)にて希望の光が差し、ここから上昇に転じるのか、あるいはさらに希望を見せて絶望に叩き落すのか、目が離せない。
作中でも代行者が同様に希望を与えてから絶望に叩き落しているので、それを作者が読者に対して実行することも十分にありうる。
各所の伏線も、徐々に消化していくが、一つ明らかになるとまた一つ伏線が現れるといった次第。
レオンがかつての救世主であったこと、従者のアンジェリットがかつての姫巫女であったことは比較的早くに推測された。
ただ、レオンが第2代救世主なのか、第3代救世主なのか、若干記述に揺れがある。
第1代は自殺したのち、第3代と同様に逃亡したこととして処理されている。
もう一人の救世主は、未完成のイコノクラストに搭乗し、発狂したまま監禁されている。
となると、逃亡したレオンは第3代と呼ぶべきだと思うのだが、4巻において「第2代救世主レオン・ササハラ・スプリングフィールド」との記述がある。
このあたりは後々、説明されることになるだろうか。
香芝省吾以外の救世主も全て日本人だったというが、レオンの名前からするに、召喚された時代は違う模様。