ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

本作をとかく絶賛しているのは、10代〜20代に多いように感じる。
30代〜40代の意見を聞いていると、積極的否定はしないものの、積極的肯定もしない。
双方から話を聞く機会の多い私は、ちょうどその中間あたりに位置しており、さてどのように映るものかなと。
本作を見るに当たって、本作そのものの事前情報は伏せていたものの、ちょっと関連する情報で気になるものは入ってしまっていた。
というのも本作のパンフレットにあるように、本作はそれこそ青田買いとも言えるような、
まだ名の売れてない実力派アニメーターの引き抜きに近いスタッフ募集を行ったといわれる。
その結果、何が起きたかというと10月期以降(あるいは、4月期・7月期からその兆候はあったのかもしれない)のアニメ制作がガタガタになったというのだ。
この真偽は、10月期以降のアニメ作品のデキを見ればなんとなくはわかろうが、
実力があるにも関わらず、名がないためにステップアップできないのだとしたら、ヱヴァはステイタスとしては打ってつけだったということだろう。
個人レベルで考えたときに、実力のあるアニメーターがヱヴァに参加することで、今後のさらなる名作の誕生につながるのであれば、それも致し方ないこととも言える。
このタイミング、ヱヴァ4部作という時期にアニメ化をしなければならなかった作品の不幸ともいえるのかもしれない。
逆に、そんな状況で輝けるアニメ作品があるとしたら、その作品は本物の名作だともいえるだろう。
さて、前置きが非常に長くなった。
元々、ヱヴァ(エヴァ)という作品は、私がシンジたちと同じ14歳当時に放映されたこともあって、非常にシンクロニシティを感じながら見た作品であった。
それだけに、当時はシンジの成長に期待していたのだが、あの作品は成長を期待していた分、
TV版と劇場版という形で2度(2回の劇場版という意味では3度)裏切られるトラウマのような作品なのだ。
それから10年以上もの時が流れ、ようやく昔の古傷程度に捉えられるようになった頃に、またトラウマに向き合えという。
心のかさぶたを剥がすような思いで、劇場に足を運んだのだが、さすがに序盤は問題なかった。
そら、序盤のストーリーを現在のアニメ技術で作り直すとしたら、すごいものができるわなぁと、すごさには素直に感動した。
ただ、すごいだけでそれ以上のものはない。
予告の限りでは、次回からストーリーが大きく変化していくようなので、そのあたりでどう捉え方が変わるかという点では楽しみではある。
少なくとも実感したのは、今の私は10代〜20代のように手放しで絶賛できないし、
かといって、30代〜40代のように次回はもういいやというように諦観もできないということだ。
劇場版に裏切られたという過去の事実があるがゆえに、疑心暗鬼のまま、次回も劇場に足を運ぶことになる予感をヒシヒシと痛感している次第。