機動戦士ガンダム MSイグルー2 第3巻 「オデッサ、鉄の嵐」

今期シリーズの課題であった重力下のMSを描くという点については、3部作を通じて十分に達成したと思わされるデキになった。
また、宇宙における高機動戦闘とはまた異なる、地上における高機動戦闘を、ガンタンクというある意味異色な機体を使って描いたことも特徴であり、評価すべきポイントだと思う。
前作シリーズと今作シリーズにおいて、3Dによる人物描写とメカニック描写は、ほぼ完成系を見たと言えるだろう。
合格ラインを超えたここからは、90点を91点にするためにどれほどのコストを費やすべきかという職人と商売人との双方の視点から判断して向上させていくことになるだろう。
そういったMSイグルーの目的であった3Dによってガンダム作品をつくるという所期目的は達成されたと思っているが、
そこから先にさらに贅沢な要望を出すとしたら、ストーリーの部分になるのではないかと思う。
MSイグルー2そのものは、シリーズを通じて完成度が高いことは確かにわかったが、死神をはじめとしたストーリーとしての要素に疑問点がなかったわけではない。
そこをさらによいものに、という要望は酷というものだとはわかっているつもりだが、
3D描写という点である高いレベルの到達点に達してしまった今、今後はこれが最低ラインの基準として消費者は求めるようになる。
そうなると、3D描写の良さを味わえるのが買い手のベネフィット・便益ですよといった売り方は通じなくなっていくので、
それ以外の付加価値を今後は消費者の方から要求される時代に突入するだろう。
そのときに、何をより良いものとして提供できるようになるかがポイントとなるわけだが、そこにストーリーについての要望といったものが、今後は出てくるのではないかと想像する。
今はまだ、そこまで要求しないとしても。
個人的に見ていて良かったなぁと感じたのは、連邦軍のジムパイロットたちが、うまく操縦できずにバタバタ転倒しているシーンだろうか。
オデッサの頃の連邦軍にMS(量産機)はなかったという設定から、オデッサにも連邦軍のMSが存在し後方支援として参加していたという設定になり、
今作でさらに踏み込んで、主力ではないが一部の戦闘にMSも積極的に参加していたという描き方に変遷を遂げてきている。
ただ、オデッサの頃の連邦軍は、まだMSの運用ノウハウはおろか、操縦そのもののノウハウすら持たず、MSの転倒などの事故が多発したといった点は共通している。
そのあたりの設定が補完されたのだと見る。
結果、そういったノウハウを得るためにMSの実験部隊が誕生し、その実験部隊のデータをフィードバックするという流れと、
教育型コンピュータに蓄積された良質なデータを、量産機全体に均一にフィードバックすることで、新兵ですらMSを操縦しても転ばずに基本動作ができるといった流れも生まれていくことになるわけだ。
今作におけるメインストリームとしての話ではないが、そういった点を補完できたという意味で、MSイグルー2はガンダムという作品において貢献したんじゃないかと思う。