魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st

本作は、アニメ版「魔法少女リリカルなのは」では語り切れていなかったプレシア・テスタロッサを中心としたフェイトたちの事情を、小説版ならびにドラマCDのエピソードをもとに再構成した内容である。
ゆえに、小説が土台となっているアリシアの事故死の背景などが映像化された点などは、なのは作品としても大きな意味を持つ。
そもそも論として、そんな大事なエピソードをなぜアニメで描いていなかったのか?といった脚本家、都築氏に対する疑問は相変わらずあるのだが、
それでも一度マルチメディア化したシナリオを再度収束し、一つにまとめあげた手腕は評価に値すると考えている。
この手法は、それこそ一度拡散したものを再度収集して使用するという意味で、まさしく劇中の高町なのはの最大の必殺技「スターライト・ブレイカー」のような技だろう。
そういった意味で、ストーリー面では非常によくまとまっていたと解釈している。
ただし、なのはがフェイトの名前を知ったのはアルフがフェイトの名前を叫んだからだが、
その時点ではなのははフェイトの名前しか知らないにも関わらず、次のシーンではアルフの名前を呼ぶという矛盾点が取り切れなかったという事実もある。
満点を上げようと思ったら、些細な漢字間違いで減点せざるを得なくなった採点者の気分と言える。
一方、作画に関しては、確かにクオリティの高いところは文句なく高いのだが、テレビ版を編集したと思われる箇所や、今回の劇場版合わせで新作した部分でも残念なクオリティの箇所が散在していたのが気になった。
総じて高いクオリティコントロールを誇っていたと思って問題ないのだが、それだけにクオリティを保てなかった箇所が目に付いてしまったといった具合だ。
サウンドに関しては、BGMに「魔法少女リリカルなのは」当時のボーカル曲や主題歌をアレンジするなど、ファンにとってうれしいアレンジがあったことは特筆すべきだろう。
主題歌については言うまでもなく、さすがはオリコン1位の貫禄で文句のつけどころがない。
また、劇場版のパンフレットが1000円と、通常の映画パンフレットよりも若干値段が高い設定なのだが、
パンフレットのつくりそのものが1000円でおつりがくるほどの質の高さを誇っているので、このパンフレットはむしろお得と言うべきだろう。
現在、劇場によっては品切れを起こしているようだが、このパンフレットはぜひ手にとって欲しい。
メガミマガジン編集長が、「魔法少女リリカルなのは」をバックアップするに至った経緯や、Donna Burkeのインタビューなど目を引くところが多い。
最後に、映画のデキの良さと商売上の戦略とは分けて論ずるべきと思うが、コミケでも見られるなのはグッズの物販商売の有り方は、そろそろ考え直すべきタイミングになっているのではないかと感じている。
利益追従は大いに結構だが、現状の売り方はあまりにも醜い。
魔法少女リリカルなのは」というコンテンツをここまで誇れるコンテンツに押し上げたのならば、今度は売る企業も全てにおいて誇れる姿勢というものを見せていただきたい。