シュヴァルツェスマーケン 第6巻 儼たる相剋の嚮後に 原作:吉宗綱紀(アージュ) 文:内田弘樹 イラスト:CARNELIAN ファミ通文庫

第666戦術機中隊に潜入していた国家保安省モスクワ派のリィズ・ホーエンシュタイン「中尉」によって、第666戦術機中隊は壊滅的な打撃を被る。
脱出に成功したのは、テオドール・エーベルバッハ少尉とカティア・ヴァルトハイム少尉、そして別の任務にて現地を離れていたグレーテル・イェッケルン中尉の3名のみであった。
国家保安省の叛乱に対して、抵抗の意志を見せていた西方総軍も、その旗頭として掲げていたアイリスディーナ・ベルンハルト大尉が敵の手に捕らわれたことで、身動きを取れなくなってしまう。
国家保安省の追撃を振り切り、なんとか西方総軍との合流に成功したグレーテル中尉らであったが、旗印のない決起はできないとの現状に絶望感に襲われる。
しかし、新たな旗印としてその役割を担うに十分な存在こそ、カティア・ヴァルトハイム・・・かつての東ドイツの英雄にして歴史から消された存在であるアルフレート・シュトラハヴィッツの娘、その真の名はウルスラ・シュトラハヴィッツであった。
これまでいつ来るか、いつ来るかと待ち構えていた伏線の数々が、ここに来て一気に開示される。
陰陽でいうところの陽にあたる部分は、カティア・ヴァルトハイムの真の名前が、これ以上ない反撃のために活きてくるところだろう。
そして一方の陰については、ついにテオドール・エーベルバッハとリィズ・ホーエンシュタインの兄妹との決着がもたらされてしまうことだ。
これ以上ない盛り上がりとともに、これ以上ない絶望感も同時に味わえる、まさに内田氏の鬼のような手腕が十二分に発揮された一冊である。