機動戦士ガンダムSEED DESTINYについて考える 第13回

停戦後の「三隻同盟」参加者に対するプラント、地球連合の対応について

プラント、地球連合間において停戦が成立すると「三隻同盟」は解散することになるのは自然な流れであるが、両陣営から外れて「三隻同盟」に参加していた者たちの処遇が問題となるので改めて確認しておく。
まずプラント側についてだが、こちらはラクス・クラインを始めとしたアンドリュー・バルトフェルドマーチン・ダコスタなどのクライン派を始め、ザフトのトップエース、アスラン・ザラディアッカ・エルスマンまでもが参加している。プラント臨時最高評議会議長のアイリーン・カナーバは頭を抱えたに違いない。しかし、ヤキン・ドゥーエ攻防戦を始め、宇宙での「三隻同盟」での活動は基本的にプラント本国を防衛するものであった。(ザフト地球連合軍への攻撃を阻止するものもあったが。)これを受け、アイリーン・カナーバはプラントへの帰属を望む者(例えばディアッカ)に対してはこれまでの行動を不問にし、プラントへの帰属を望まない者(例えばラクス・クラインアスラン・ザラアンドリュー・バルトフェルド)に対しては特赦によってオーブ連合首長国への亡命を許すこととなる。
アイリーン・カナーバは「クライン派」と呼ばれていたが、恐らくはクライン派とは「反パトリック・ザラ派」として轡を並べていただけで、熱心なクライン派ではなかったのではないかとの可能性がある。当時のプラント内にはパトリック・ザラ派、クライン派の二つだけではなく、クライン派ほど積極的ではないが、反パトリック・ザラという派閥も存在したのではないかと捉える。もし、停戦後にクライン派が主権を握ったというのであれば、三隻同盟の参加者は英雄としてプラント内に迎え入れられるはずである。特に、盟主であるラクス・クラインに関しては、だ。だが、アイリーン・カナーバはそれをしない。彼女はクライン派をうまく使い、反パトリック・ザラ派としてプラント内の主権を握ったのだ。だからこそ、邪魔なラクスやアスランの亡命をあっさり認めた、とも取れる。
一方の地球連合は旧態依然としている。ということは、軍内の規律等は変わらずにあるということである。すなわち、「脱走=死刑」という決まりが生きていることになる。(仮に軍事法廷という手続きがあったとしても、ブルーコスモスの入り込んだ軍内では本来の手続きは期待できず、アラスカでのウィリアム・サザーランド大佐によるアークエンジェル隊への仕打ちのようになるだろう。)これを考えると、地球連合を抜け三隻同盟に参加した者(例えばマリュー・ラミアスコジロー・マードック)のどこに、地球連合への帰属を望む道理があろうか。ならば、名を捨ててでも、第三国における新たな人生を選ぶのが道理というものだ。
このようにプラント、地球連合において「三隻同盟」参加者に対する処遇の差があるとしても、亡命を望んだ者の方が多く、プラントへの帰属を望んだのはディアッカ・エルスマンのみと少ない。では、なぜディアッカは帰属を望んだのか。これは、アスラン・ザラキラ・ヤマトとの亡命を望んだように、ディアッカイザーク・ジュールへの友情・信頼関係を取ったということなのではないかと邪推する。彼にとってみれば、赤服としての本来の出世コースよりも緑服としての本来あるべきイザークとの共同戦線を選んだ、ただそれだけのことだったのではないだろうか。(イザークのことだけでなく、評議会にいた父親、タッド・エルスマンのことを案じたのかもしれない。)