機動戦士ガンダムSEED DESTINY PHASE-12「血に染まる海」

久方ぶりの大々的戦闘シーン。地球連合軍艦隊を相手に甲板から甲板に渡るソードインパルスガンダムは「新世紀エヴァンゲリオン」のエヴァ弐号機を思い起こさせるが、文句なしにかっこよかった。今回はインパルスガンダムの「分離・合体」機構のメリットを強調する話と解釈してよいと思われる。フェイズシフトダウン後のエネルギー補充をどうするかが前大戦時のPS装甲TP装甲を持つ機体の課題だったが、ザフトの提示した解答が今回の手段。現時点で詳細な資料が手元にないが、母艦が五体満足な状態ならば換装せずともエネルギーを補充できるのは大きい。なおかつ、インパルスの採用した変形・合体機構は今回のように脚部を破損したとしてもパーツの換装によって問題を克服できるというメリットがあるようだ。「機動戦士Vガンダム」のVガンダムが強力な武装と装甲を携えて帰ってきました、と捉えていいのかもしれない。
シン・アスカもまた「SEEDを持つ者」であるようで、現在確認されているのはキラ・ヤマトアスラン・ザラカガリ・ユラ・アスハ、(ラクス・クライン)。本作もまた「困ったときの種割れ」で片付けられてしまうような気がしないでもないが、今回は久方ぶりの主人公らしい活躍を見せたのだからよしとしようではないか。
相変わらず「赤服」の着用期間が不明。というのも、ギルバート・デュランダル議長より、正式にセイバーガンダムを受け取るアスラン・ザラが身につけた軍服が「赤服」。アカデミー卒業時の10位だか20位までが赤服を身につける資格を持つといわれるが、彼らがどれだけの期間、赤服を着用しているのかが不明。イザークのように昇任し、指揮官クラスに役割が変われば赤服を脱ぎ、現状維持ならば変わらずに赤服を着用し続けるということか。ということは、赤服とは「資格」であって「ランク=階級」ではない。「階級」であるならば、ディアッカイザークの副官として赤服の上に立つのはおかしい。その場合、彼に副官クラスの者が着用する軍服、たとえば「黒服」などを与えなければならない。しかし、それをしないということは「緑服」や「赤服」が階級を表すのではなく、その軍服を着るものが持つ経歴なり資格なり能力を示すものなのではないか。ディアッカは、一時的、なりゆきとはいえ本国であるプラントを離れた身である。だから、自ら「赤服」という資格を放棄したのだ。ゆえに、「降格」などというちゃちな二文字で、彼の行動を評するべきではない。
アスランが議長直属の「FAITH(フェイス)」の紋章を受け取るのを見てアイコンタクトする議長とミーア・キャンベル。ミーアは議長に利用されていることをわかった上で行動している。その振る舞いは純粋に見えて、実は議長の意志に忠実ということなのか。
次回はフリーダムガンダム復活。オーブ連合首長国ザフトが敵対するからこそ生じる「フリーダムガンダムVSインパルスガンダム」の可能性。ラクス・クライン暗殺をザフトが計画、実行するのは、「本物のラクス・クライン」が邪魔なためか。
第1クールラストに前作の主人公の再起を描くのは「機動戦士Zガンダム」のアムロ・レイの再起を想起させるが、キラ・ヤマトの描写を極力抑え、視聴者をやきもきさせた後に、フリーダムガンダムで復活!とした方が盛り上がったのではないか。しかし、それで喜ぶのはいわゆるメカニックな部分を求める「オトコノコ」的感性であり、キラ・ヤマトというキャラクター的要素を求める「オンナノコ」的感性には合わない。だからこその頻繁すぎるキラ・ヤマトの露出。今度のフリーダムガンダム復活はこの「オトコノコ」、「オンナノコ」の感性のギリギリ折半できるラインなのかもしれない。