機動戦士ガンダムSEED DESTINYについて考える 第16回

アイリーン・カナーバクライン派か?

個人的に悩んでいるのがアイリーン・カナーバのポジション。彼女をクライン派と一くくりにするにはどうも無理がある。クライン派と協調した穏健派であったことは確かであろうが、クライン派とは、穏健派の中でも武力をもってザラ派に抗した最も過激な派閥だったということができる。そんなクライン派の議員が、停戦後の臨時評議会の議長に認められるだろうか?そしてなおかつ、彼女自身がクライン派三隻同盟に所属した人間たちを裁いているのである。彼女は、停戦間際のごたごた、オペレーション・スピットブレイクから始まる一連の混乱によって多くの公式記録を紛失したとして、クライン派三隻同盟に参加したザフトの兵士たちの罪を不問にした。事実上の恩赦、特赦を与えたのである。彼女がクライン派だとするならば、裁かれるべき者が裁くという構図になってしまう。それはおかしい。
だから私はこう考える。アイリーン・カナーバはクライン派寄りの穏健派議員だったのだ。反パトリック・ザラ派という点では共通していたので、やり方の相違こそあれ、彼女はクライン派をうまく利用した形になる。そしてパトリック・ザラ体制を崩す一石を投じた彼らを、恩赦、特赦という形で報いたのだろう。