機動戦士ガンダムSEED DESTINYについて考える 第27回

二分化・二層化するザフト

対ロゴス戦線においては敵勢力が地球連合軍を母体としていたこともあり、ザフト内の二分化・二層化は表面化していない。むしろ、ロゴスと見なされることを嫌った地球連合軍がザフトに合流することさえもあった。
しかし、オーブ連合首長国のディスティニープラン導入拒否、ならびに真のラクス・クラインオーブ連合首長国軍との共闘により、ザフト内に二分化・二層化が進む。元々熱心なギルバート・デュランダル議長派であった兵士はそのまま変わりないが、反議長派、中道派、ラクス・クライン派、旧クライン派(ここでは、ザフトにありながらもラクス・クラインを支持する兵士と、前大戦時にクライン派三隻同盟として活躍した兵士とを厳密に区別する)の動きに変化が起こる。
反議長派や中道派の中でもやや反議長派よりのザフト兵たちは、旧クライン派に協力する、あるいは積極的に協力しないまでも、現ザフトの作戦にも積極的に参加しない、積極的に前線に出ないという行為によって、結果的な利敵行為、旧クライン派ラクス・クラインオーブ連合首長国宇宙艦隊への目に見えない支援を行うことになる。イザーク・ジュールディアッカ・エルスマンシホ・ハーネンフースらは、これに当たる。
中道派においてやや議長派よりのザフト兵たちは、議長の戦力として組み込まれ、前線にて使役される。ルナマリア・ホークタリア・グラディスなどミネルバのクルーはここにあたる。
今回、最も不遇に見舞われたのはラクス・クライン派のザフト兵である。ラクス・クラインへの支持は以前と変わらずに持ちながら、現プラント政権、議長は自らの支持するラクス・クラインを認めない。ゆえに、ラクス・クラインを討てと上層部は命じる。だが、依然として変わらぬ信奉を行う兵にとって、彼女を討つことはできない。さらに、彼女は「戦闘を停止し、道を開けろ」という。彼の精神面において指揮系統が二本化した瞬間であり、さらにその指揮が矛盾しているために身動きが取れなくなる。そこを容赦なくオーブ艦隊は狙い討つ。場合によっては反逆と見なされ、仲間に撃たれた者もいるだろう。いずれにせよ彼らが一番の被害者であることは明確である。
最後に旧クライン派だが、彼らはブレイク・ザ・ワールド以前からラクス・クラインを支持し貢献してきた最大の功労者である。中でも諜報組織ターミナル、開発・生産組織ファクトリーの果たした役割は大きい。彼らの連携があって初めて、フリーダムガンダム、並びにアークエンジェルの修復が可能となり、プラントに送還されたガイアガンダムの奪取が可能となり、ストライクフリーダムガンダムインフィニットジャスティスガンダムドムトルーパーの生産が可能となったといえよう。