機動戦士ガンダムUC 第7巻 福井晴敏 角川書店

冒頭とラストで大幅にキャラクターたちの立ち位置が変化している非常に目まぐるしい展開を迎える。
中でも印象的だったのは、ブライト・ノア大佐とバナージ・リンクスの邂逅で、歴代のガンダムパイロットを見てきたブライトならではのセリフが染み渡る。
ブライトはいわゆるガンダムという一連の原作に存在するオリジナルのキャラであり、そのオリジナルの代表のようなキャラである彼が、このユニコーンにてどのような役割を果たすのか、
また、ユニコーンという作品に違和感を生じさせないだろうかという点が前巻より気がかりではあった。
しかし、読んでみればなんのことはない。というよりは福井晴敏の手腕が見事だったという言うべきなのだろうが、全く違和感ないブライトがそこにいたのだった。
これは、個人的に非常に大きなポイントで、これでユニコーンはいわゆる宇宙世紀ガンダムとして、自分の中ではすっきりと納めることができたのである。
本巻は、「逆襲のシャア」へのオマージュが随所に仕込まれていることも見逃せない。
ユニコーンバンシィの衝突によって発生したサイコ・フィールドを、「生命が吸われる光だ!」とする表現は、ナナイ・ミゲルの「大佐の命が吸われていきます」というシーンを想起させる。
あまりにも自明で書きとめる必要性も疑問ではあるが、「ユニコーンは伊達じゃない!」と叫びながら前述したサイコ・フィールドとは異なる光で奇跡を起こすシーンは、言わずもがな「逆襲のシャア」のラストシーンである。
ここまで来て、ようやく箱探しのためのお膳立てが整ったという形になった。
次巻からがいよいよラプラスの箱へと迫っていくことになる。
では、「ラプラスの箱」とは何だろうか?という疑問が当然あるが、どうやらここまでに少しずつ見えてきたように思える。
個人的には、6巻の宇宙世紀憲章に触れられたことから、この憲章が実は正式なものとして成立していないことを示す証拠こそ、「ラプラスの箱」とされるものではないかと推測する。
かつての第2次世界大戦において、日本が戦艦ミズーリ号で降伏文書に調印した際、連合軍側の不手際で、あやうく調印書が正式の文書として通用しないことになるところだったというエピソードがあるが、
実は、宇宙世紀憲章でも同じミスがあり、その確たる証拠こそ宇宙世紀の幕開けとともに四散した首相官邸に納められていたレプリカではない本物の宇宙世紀憲章の石碑であるという可能性だ。
これが明らかとなれば、そもそも地球連邦政府にコロニーを統治する権利が存在しないことになり、各コロニーが独立の大義名分を獲得することになる。
そうなれば、地球連邦政府を根底から揺るがす「ラプラスの箱」にもなりうる。
そうした邪推は置いておくとしても、「ラプラスの箱」をどのようなものとして描くのか、いよいよそのエピソードが近づいてきたように感じて、非常に楽しみである。